松葉ヶ谷雁信

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立教開宗

今日は 立教開宗についてお話をしたいと思います

立教開宗とは 日蓮聖人がご自分の信仰を確立され 初めてお題目をお唱えされたことを意味しています つまり 日蓮宗の誕生といえます

日蓮聖人は 御年12歳で 生家の近くの名刹 清澄寺に入られました ものすごく山の中で 現在でもとてもお参りしにくいところです 700年前であればお寺に行くのはとても大変だったと思います 昔は 清澄寺は女人禁制のお寺で 女性は途中までしか行けませんでした ですから 幼い日蓮聖人に付き添ってきたお母様も お寺まで見送ることはできず 途中でお別れしなければなりませんでした 別れた場所と言われるところが今でもあります 涕涙石という石のあるところで 涕涙石というのは涙の石という意味で 幼い日蓮聖人を手の届かぬ所へ送るお母様の涙の場所と言う意味です 当時の数え方で12歳ですから 現在の11歳ぐらい つまり5年生ぐらいでしょうか お母様の悲しみは察するに余りあります そのような思いを理解した上で 日蓮聖人はお寺で生活を始められました 16歳になって 決意を固め お坊さんになられました それから本格的な修行が始まりました

清澄寺というお寺の御本尊は 虚空蔵菩薩という菩薩様で 智慧を授ける菩薩として有名です 若き日蓮聖人は 日本一の智慧者にして下さいとお願いしました 21日の間必死になって修行し祈りました 21日目の朝 夢の中に虚空蔵菩薩が表れ 日蓮聖人に智慧の珠を授けられました この出来事から なお一層修行と勉強に励まれるようになりました 清澄寺で学ぶことが終わり 今度はその他のお寺に勉強に出かけました いろいろな宗派があって どの教えが最もお釈迦様の教えを正しく伝え 素晴らしく そして人々を救う教えであるのかを知るためでした 当時の仏教の中心地である京都や奈良の有名なお寺を回り勉強を重ね 政治の中心地である鎌倉でもお寺を訪ねて教えを乞いました 一生懸命勉学と修行を重ねる日々は瞬く間に過ぎていき 日蓮聖人は32歳になっていました 12歳で勉強を始めた日からいつしか20年もの時間が経っていたのです

20年にも及ぶ研究の結果 お釈迦様の最高の教えは法華経であること その他の教えは 法華経の教えに導くための方便であること ただ 法華経の教えは大変難しくわかりにくいこと 末法に生を受けた私たちにとっては特に難しいこと そのために 法華経の教えが凝縮しているお題目を私たちはお唱えすべきであることをその結論として確信されたのです

もう少し簡単にお話しします 皆さんは 幸せになりたいですか?もちろんそうでしょう 不幸になりたい人などいません ではいつ幸せになりたいですか?今日ですか?明日ですか?明後日ですか?どのくらいの期間幸せでいたいですか?どのくらい幸せになりたいですか?このようなことはみんなが考えることだと思います 日蓮聖人もそうでした どのようにしたら 自分がお世話になった人に幸せになってもらえるだろうかとお考えになったのです 今幸せになりたい 生きている間に幸せになりたい 死んだ後も幸せになりたい ずっと幸せになりたい どのようにしたら そのような幸せになれるか その結論が お題目を信仰することであったのです 日蓮聖人は 今生きている間だけでなく 死んだ後も幸せになれる教えがお題目の教えだと言われているのです

そのお題目を始めて唱えられたのが 1253年4月28日のことでした 昇る旭に向かって7回お唱えになったと言われています その日は 20年に及ぶ研鑽の結果として 清澄寺で初めて法話をする日でした 多くの信徒が集まり 日蓮聖人の法話を楽しみにしていました 集まった多くの人は念仏信徒 つまり浄土教の教えを信仰する人達でした もちろん日蓮聖人は そのような人たちであることは十分承知していましたし その人たちにお題目を教えを説くことがどのような結果を招くかもわかっていました それでも敢えて 法華経の素晴らしさ お題目の大切さを説かねばならなかったのです 何故でしょうか それは その人たちを救いたかったからです 特にお世話になっている地元の人達にしあわせになって欲しかったからでした そのために 日蓮聖人は一生懸命勉強し 命がけの法話をすることを決心したのでした このことから 逆に考えてみると 旭が森で 昇る旭に向かってお題目をお唱えする日蓮聖人のお気持ちが想像できると思います 期待に胸ふくらませていたでしょうか 嬉しくて仕方なかったでしょうか 私は逆だと思います とても怖かったと思います これから起こるだろうことを想像して恐ろしかったと思います 大変緊張していたことでしょう 悲壮な覚悟でお題目をお唱えされたことでしょう 私だったら同じことができたかどうかわかりません

この日が命がけの布教の始まりでした 苦難に満ちた人生の始まりでした だからこそ 日蓮聖人に対して有難いと思います この日がとても大切と思います 次の日曜日 ブローホールで763回目の立教開宗の法要を行います 皆さんと共に 日蓮聖人のお気持ちを考えながら 深い感謝の気持ちを込めてお題目をお唱えしたいと思います 是非お参りください

2015年4月19日