松葉ヶ谷雁信

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462の感謝

今日は 永代経の法要を営みました 永代経とは 特別にお申し込みを頂いた方の御名前や戒名を記した霊簿を作り このお寺がある限り毎年一回その方達の供養をするというものです 私たち夫婦のように子供がおらず死後供養してくれる人がいない方 子供がいても供養してくれることを期待できない方を考えてのプログラムでした
しかし 実際には そのようなことは関係なくお寺で供養してほしいと申し込まれた方が多いようでした 生きている内に申し込まれた方も多く 戒名や死亡年月日が空欄の方も目立ちます

永代経は 1991年に始まり 現在461名の個人と1組の団体のお名前が霊簿に記載されています 両親のために申し込まれた方 その他兄弟や親戚など家族のために申し込まれた方 自分のために申し込まれた方 いろいろな方の名前が書かれています

このお寺には真珠湾攻撃で命を落とした日本軍兵士の霊簿があります この霊簿は 日本海軍のOBが独力で製作したもので ハワイに納めたいと各宗派のお寺を訪ねたそうです
しかし 世間の反発を恐れてどこのお寺も拒否しました その中で唯一受け入れを表明したのは このハワイ日蓮宗別院でした 当時開教総長であった堀先生の英断といえます 霊簿を奉安している縁で 以前はアメリカ海軍のOBと第7艦隊関係者 それに日本海軍のOBで合同の真珠湾攻撃犠牲者追悼法要が毎年このお寺で行われていました
しかし OBが皆高齢となり法要を続けることができなくなり 小川先生の判断で永代経の霊簿に載せ供養することにしたのです

私は約20年前に初めてハワイに来ました ちょうどその前の年にこの永代経が始まりました ですから この霊簿に記載されている多くの人と実際に私は会ったことがあります 法要中に一人ひとりの名前を読んで供養をする時 その方々のお顔が脳裏に浮かんできます 数日前に霊簿を確認しました 以前申し込まれた人の内 昨年の永代経から今日までに亡くなった方の戒名と没年月日を記入しなければならないことに気がつきました 墨をすっている時 その方々とのいろいろな思い出が頭の中を駆け巡りました もちろん私が知らない方もいます でも その方達の戒名を見るとなんとなくその人がどのような人であったのか私たち坊さんにはわかるのです

人には2つの死があるといわれています 一つは物理的な死です もう一つは忘却という死です もし私たちの記憶の中で生き続けるのであれば その人はまだ生きていると私は思っています 記憶から完全に消え去った時 その人は本当の意味で亡くなるのかもしれません その意味で 永代経法要とは私の記憶の中で復活の日といえるかもしれません 一人ひとりの記憶が私の心の中で蘇ってくるのです 461名の方が私の中でまだ生きているのです そのことがとても大切に思われます

正直に言えば 法要で全ての名前を読むことはとても大変なことです 聞いている皆さんにとっても大変なことと思います 462の名前を読むことはとても大変なことですが とても大切なことだと思っています 感謝と追悼の念を込めて毎年一人ひとりのお名前を読んでいこうと思っています これからも多くの人の名前がこの霊簿に記載され 毎年供養を受けられるように 私の中でそして皆さんの心の中でいつまでも生きながらえるようにと願っています

2013年11月10日