松葉ヶ谷雁信

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旭日苗上人

前回私は蓮のお話をしました あれからうちの池の蓮を見に来る人が増えたような気がします 近所でもないと思いますが 見たことのない人が時々来て蓮を眺めていきます 先日は とても素敵な蓮池とのメモと共に少し寄付を置いていってくれました 有難いことです このお寺を尋ねてきた人が美しい蓮を見て喜んでくれたらとても嬉しく思います

さて 今日は 清正公祭並びに先師会法要を営みました 清正公は 今から500年ぐらい前の熊本の領主加藤清正のことで 日蓮宗の信徒として有名な方です 信仰者の在り方の理想として今も尊敬を集めています 先師会とは このハワイ日蓮宗別院の開祖高木行運上人から歴代の先生方14名の内 亡くなられた11名の先生 この別院は ハワイ日蓮宗の中心寺院ですので その責任において他のハワイ日蓮宗教会の亡くなられた先生を追悼する法要です ただ 今年の法要にはもう一人特別に回向申し上げた方がおられます それは 旭日苗上人です 今日は その旭日苗上人についてお話ししたいと思います

旭日苗上人は 1833年に新潟でお生まれになりました 1845年に13歳で得度し 日蓮宗のお坊さんとしての第一歩を踏み出し始めました 中村檀林という当時の大学のような教育機関で日蓮宗の勉強と修行を重ね 福井や京都のお寺の住職を勤めた後 1885年佐賀の本山光勝寺の貫首に晋山 翌年には京都の本山妙覚寺貫首として晋山 1902年京都の大本山本圀寺貫首として晋山されました 日蓮宗のお寺は 身延山久遠寺を総本山として 7つの大本山 約60の本山 約5000の一般寺院から構成されています 日蓮宗のお坊さんは約8000人ぐらいいます その中で 大本山の貫首はたった7人 いかに名誉なことかわかります 旭上人は 本圀寺貫首の時に第18代日蓮宗管長にも就任されました 3年前にこのお寺に内野管長にお出で頂いたことは記憶に新しいことですが 管長とは日蓮宗の最高位なのです

さて その旭上人ですが 布教に関する功績については文字通り枚挙に暇がありません 日本国内においては 中国地方や北陸 北海道などを何か月もかけて布教伝道をされました また 海外においても9年にわたり朝鮮半島の布教に当たり ソウル 仁川 元山 釜山などに布教拠点を設け 1892年に海外布教宣教会を組織されました 1894年には ロシアのウラジオストックを訪れ 1899年には中国の上海に渡り法華堂を建立されました この同じ年に高木行運先生が 日蓮宗の僧侶として初めてハワイに来られました 翌年旭上人はインドへ行かれています その後も精力的に海外での布教に邁進され 特に朝鮮半島や中国で活躍されていたようです アメリカとの関わりですが 弟子の旭寛成上人をロサンゼルスに派遣し 1914年に米国別院を開創することになりました また 1916年には弟子の丘龍潮上人を派遣し シアトル教会を開きました

最後にハワイとの関わり合いですが 1915年にサンフランシスコで開催された万国仏教徒大会に日本代表として参加をされたのですが その途上7月19日にホノルルに寄港され 高木先生や布目先生と信徒の大歓迎を受けて一泊され 翌日出発されました 万国仏教徒大会からの帰途 8月27日に再びホノルルに寄られました 2週間ほどの滞在で その間御親教 講演会 歓迎会など多忙なスケジュールとなり ハワイ島のカパパラ教会にも足を延ばされました 旭上人がお出でになった1915年のこのお寺の様子はどのようなものであったかわかりますか?高木先生がハワイ島から転居されたのが1912年で 1914年8月にバロンレーンに土地を購入し 9月には法人としての認可を米領ハワイの役所から受けています 1917年10月に新本堂が完成しています ということは 旭上人がハワイに来られた時は 住宅の一角を使った仮本堂の状態で きちんとした本堂は建築中でした きちんとした本堂があったのは 日蓮宗ではカパパラ教会だけでした ハワイ滞在中旭上人は 求めに応じて何幅かの御本尊を認められ 授与されています 現在残っているのはカパパラ教会で書かれたもので ヒロ教会に保存されています 多分間違いなくこの別院のためにも書いて頂いたことと思いますが 残っていません とても残念なことです サンフランシスコから帰られた翌年1916年 84才で旭日苗上人は遷化されました 正に布教に捧げた御一生でした 現在私は出張に飛行機を使っています 快適なシートに座り何もすることがなくても移動はとても疲れます 当時の交通事情を考えると移動はとても大変なことだったと思います また当時の日本の男性の平均寿命は42歳で 84才といえばその倍の長さとなりかなり高齢といえます 遷化されるその直前まで世界を股にかけて布教されていたことを考えると 超人といえるかもしれません そして 今年2015年は 旭上人が遷化されて100回忌となります そのため今日の法要で特別に回向を捧げたのです 私は今日から日本に行きます 世界各地で活躍する国際布教師が一堂に集まり会議を行うのです その折に 全員で旭上人に回向をすることになっています

旭日苗上人のことは皆さんあまりご存じないかもしれません しかし 日蓮宗の海外布教においては大きな功績のあった方で そのおかげで私たちも今日を迎えることができていることを心に留めておいて下さい

2015年6月14日